失敗しない妊婦さんの体重管理のコツ8選。体重管理失敗で恐いリスク病気例について
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妊婦さんにとって体重管理は大きな課題です。気をつけてはいても「体重が増えすぎてしまう」「体重がなかなか増えない」など、思うように体重コントロールが出来ずに悩んでいる人がとても多いです。
しかし、妊娠中の体重増加は「増えすぎ」も「少なすぎ」もよくありません。複数の恐いリスクの発生率が高くなるからです。
この記事では、妊婦さんの理想的な体重増加量の目安や、体重管理の失敗「過多」「過小」の恐いリスクや、体重管理を成功させる8つのコツなど解説します。
妊婦さんの理想的な体重増加量の目安とは?
まずはBMIをチェックしよう!
BMI(Body Mass Index)はボディマス指数のことで、体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数です。次の計算式で算出することができます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMIの数値によって、次のように体格区分になっています。
体格区分 | BMI |
低体重(やせ) | 18.5未満 |
ふつう | 18.5以上25.0未満 |
肥満 | 25.0以上 |
※体格区分は非妊娠時の体格です。(参考資料:妊娠期の至適体重増加チャート(厚生労働省))
体重管理をしっかりするために、妊娠前または妊娠初期で、赤ちゃんの体重が関係ない時点でのBMIを知っておきましょう。
例えば、体重50kg・身長155cm(1.55m)であれば…
BMI=50÷1.55÷1.55=20.81
体格区分は「ふつう」となります。
体格区分別の理想的な体重増加量の目安について
厚生労働省が設定している数値では、体格区分別(やせ・ふつう・肥満)における、妊娠中の理想的な体重増加量は次のようになっています。
体格区分 | BMI | 理想の体重増加量 |
低体重(やせ) | 18.5未満 | 9~12kg |
ふつう | 18.5以上25.0未満 | 7~12kg |
肥満 | 25.0以上 | 5kg or 個別対応 |
※個別対応について
・BMIが25.0をやや超える程度の場合、おおよそ5kgが体重増加量の目安です。
・BMIが25.0を大きく超える場合、医師と相談し、他のリスクなどを考慮しながらの個別対応です。
妊娠中の体重増加の内訳は?
出産の頃、赤ちゃんの体重は約3kgですが、妊婦さんの体重はそれ以上に増えます。
・赤ちゃんの体重:約3kg
・胎盤:約0.5kg
・羊水:約0.5kg
・母体の子宮、乳房:約1.5kg
・血液:約2.5kg
さらに赤ちゃんを出産し育てるのに必要な脂肪が増え、水分が蓄積されます。
妊娠初期・中期・後期それぞれの理想的な体重増加ペース
上記で紹介したのは、全妊娠期間における理想的な体重増加量の目安です。
この項目では、初期・中期・後期別で「1週間ごとにどのくらいのペースで体重増加すれば良いのか?」を解説します。
こちらも厚生労働省が推奨する体重増加量が設定されており、
・妊娠期間別(初期・中期・後期)
・体格区分別(やせ・ふつう・肥満)
にて次のようになっています。
(参考資料:妊娠期の至適体重増加チャート(厚生労働省))
体格区分 | BMI | 理想の体重増加量 (初期) |
理想の体重増加量 (中期~後期) |
低体重(やせ) | 18.5未満 | 個別対応 | 0.3~0.5kg/週 |
ふつう | 18.5以上25.0未満 | 個別対応 | 0.3~0.5kg/週 |
肥満 | 25.0以上 | 個別対応 | 個別対応 |
肥満(BMI25.0以上)の妊婦さんについては、全期間にわたり、医師と相談しながらの個別対応となります。
妊娠初期については、「吐きつわり」の人もいれば「食べつわり」の人もいるなど個人差が大きいため、それぞれの妊婦さんの状況を踏まえて個別対応していくこととなっています。
妊娠初期は体重が増えなくても問題がないことが多いですが、5%以上の体重減少がある場合には、「妊娠悪阻」が疑われるので、早めに医師に相談しましょう。妊娠悪阻について気になる方は「妊娠悪阻とはどんな症状?病院へ行く目安6つのポイント」をご参照下さい。
図を見て分るように「やせ~ふつう」の妊婦さんであれば、安定期に入ってからは「0.3~0.5kg/週」というように、一定のペースで少しずつ体重増加するのが好ましいとされていますので、急激な体重増加には要注意です。
特に妊娠中期は、つわりが終わって「やっと食べれる!」と食欲が増す人が多いので気をつけましょう。
妊婦さんに知って欲しい!妊娠中の体重管理失敗の恐いリスクとは!?
妊婦さん自身、体重管理が大切であることは分ってはいても「気をつけているけど増えちゃう!」「なかなか体重が増えない!」など、体重コントロールが上手くいかないケースも多いようです。
ただ、妊婦さんの体重増加は『過多』でも『過小』でも出産リスクが高くなるんです。具体的には次のようなリスクがあるとされています。
体重が増加し過ぎた場合のリスクについて
妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症
赤ちゃんの発育が悪くなったり(胎児発育不全)、胎盤が子宮の壁からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなり(常位胎盤早期剥離)、赤ちゃんの状態が悪くなり(胎児機能不全)、場合によっては赤ちゃんが亡くなってしまう(胎児死亡)ことがあるなど、妊娠高血圧症候群ではお母さんと赤ちゃん共に大変危険な状態となることがあります。児だけではなく母体のリスクも高まります。(参照HP:日本産科婦人科学会)
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病になると、おなかの中の赤ちゃんも高血糖になり、さまざまな合併症が起こる可能性があります。
・赤ちゃん→流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡など
分娩遷延(ぶんべんせんえん)
初産婦で30時間以上、経産婦で15時間以上かかっても生まれないこと。赤ちゃんが巨大児になったり、産道まで脂肪がついてしまっていたりして、スムーズに分娩出来なくなります。分娩が長引くことで出血量が多くなり、産後にも影響がでることがあるので、必要と判断されたら、鉗子分娩や吸引分娩、帝王切開になるようです。
他にも、腰痛、妊娠線ができやすい、胎児心拍の異常などのリスクが高まります。
体重増加が少なすぎた場合のリスクについて
低出生体重児
赤ちゃんに必要な栄養が十分に行き渡らず、低体重児となってしまうケースです。英国・サウザンプトン大学医学部教授のデイヴィッド・バーカー教授の調査によると、低出生体重児は成人になってから、冠状動脈性心臓病・糖尿病・高血圧などの生活習慣病にかかる人の割合が高くなることを明らかにしています。
貧血
妊娠中の女性は、出産時の大量出血に備えて血液量が1.5倍になります。このとき血液中の液体成分は最大で約50%増加しますが、赤血球は約20%ほどしか増加しません。血液濃度が薄まった状態になると同時に、胎児へも血液の材料を供給しなければならないために鉄分が不足し、貧血を引き起こしやすくなります。
現在は、妊娠前にすでに貧血の状態が多いです。分娩時に輸血が必要になることもあります。
以上のように、妊婦さんの体重管理がしっかり出来ていないことで、さまざまな恐いリスクの発生率が高まることが分ります。体重管理のことを口を酸っぱくして言う医師が多いのも、理解していただけるでしょう。
妊娠中の体重管理を成功させる8つのコツ
【其の一】1日3食、食事はバランスよく
妊娠中の食事は主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせ、1日3回食べるようにしましょう。主食は『ご飯・パン・麺』など、主菜は『肉・魚・卵・大豆』など、副菜は『緑黄色野菜・きのこ・イモ・海藻料理』など、1品の量を増やすのではなく、品数を多く摂ることが望ましいです。
最近は糖質制限ダイエットが流行っており、体重管理のために主食(ご飯などの炭水化物)を抜く人も多いです。糖質を制限するのは問題ありませんが、糖質制限とカロリー制限は違いますので、カロリーはしっかり摂るようにしましょう。
参考資料として厚生労働省が作成した「妊産婦のための食事バランスガイド」をご紹介します。
主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物の料理グループごとに、どれだけ「つ(SV)」食べたかの目安がわかる早見表です。プリントアウトして目に見えるところに貼っておいたら便利かと思います。
【其の二】よく噛んでゆっくり食べる
よく噛んでゆっくり食べることで、血糖値の上昇が緩やかになったり、満腹中枢を刺激してドカ食いを避ける効果が期待できます。食べる順番としては、野菜や肉・魚を先にし、炭水化物を最後にすると良いです。または、丼モノは避けるなどの工夫も良いでしょう。
また、よく噛むことで唾液の分泌量が増えますが、唾液には口内の虫歯菌や歯周病菌をやっつける働きもあるので、虫歯や歯周病の予防にもなるんです。他にも、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンを増やし、心をリラックスさせる効果が期待できるなど、、、よく噛んでゆっくり食べることには沢山のメリットがあります。
【其の三】味付けは『うす味』を心がける
塩や砂糖などの調味料の量を抑えることが大切です。特に市販のドレッシングは高カロリーのものが多いので要注意。しその葉・柚子・ゴマ・酢・レモンなど、風味や香りづけや酸味などで味付けすることをオススメします。また、色んな味付けにすることも大切。甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、薬味を適度にとりいれると良いでしょう。
塩分の摂りすぎには注意です!身体が体液のバランスを取り戻そうとするので、水分の摂取量が多くなります。血液や細胞まわりに水分が増え、水太り状態になり、むくみがちになってしまいます。
【其の四】適度に間食を取り入れる
お腹が空きすぎると空腹感が強くなってしまい、ドカ食いにつながりやすいです。適度に間食をはさむことでドカ食い防止になり、急激な血糖値の上昇を抑えることもできます。間食はお菓子ではなく、例えば「干し芋/ナッツ類/ドライフルーツ/おからクッキー/野菜ケーキ/寒天/フルーツ」などオススメです。
【其の五】お菓子・外食は太る要因であると心に刻む
カロリーオーバーの原因になりがちなのが、糖分の摂り過ぎです。お菓子やケーキは糖分が多く、カロリー過多になる可能性が高いです。絶対にNGとは言いませんが、糖分のことをよく考えた上で、お菓子やケーキなどを食べるようにしましょう。
【其の六】夜遅くの食事は避けること!
夜寝る前に食べると太りやすいです。少なくとも、寝る3時間前には夕食を済ませるようにして下さい。夜遅く食事をすると、就寝中にも胃腸が活発に動くことになってしまい、眠りが浅くなってしまいます。夜、しっかり熟睡するためにも「寝る3時間前には夕食をすませること」は大切です。(参照:妊娠初期はとくに眠い!?妊娠中の眠気の3大原因&13の対策ワザ)
【其の七】軽い運動をする、家事をする
運動不足解消や基礎代謝を高めるためにも、妊娠中の身体に負担がかからないような、軽めの運動を生活に取り入れたいところです。妊娠中の運動と言えば散歩などのウォーキングが有名ですが、体調が安定しているのであれば、「マタニティヨガ」「マタニティビクス」「ピラティス」などをするのもオススメです。水中での運動もオススメです。普段から体力作りをしておくといいお産にも繋がります。
妊娠中は身体の安静の為にじっとしてしまいがちですが、できる範囲で身体をよく動かすようにしましょう。
【其の八】毎日体重計に乗る
妊娠中の体重管理、計画的に体重を増やしていく為にも、体重をこまめにチェックすることが大切です。できれば毎日体重計に乗りたいところです。アプリや手帳などに、体重を日々記録することで、体重管理の意識は高まるでしょう。
まとめ
以上、
・初期・中期・後期それぞれの理想的な体重増加ペース
・体重管理失敗『過多』『過小』による恐いリスク
・体重管理を成功させる8つのコツ
などなど、解説させていただきました。
妊娠中に上手に体重コントロールすることが、重要である理由は分っていただけたと思います。
理想のペースで体重増加するために、一番重要なのはやっぱり食事です。妊娠中の食生活を正しくすることで、妊婦さん自身の身体づくりも出来ますし、赤ちゃんの健康や成長発達にも良い影響を与えることができます。
この記事で解説した「体重管理を成功させる8つのコツ」は、どれも難易度の高いことではありませんし、すでにどこかで見聞きした内容も多いでしょう。もし実践できていないようでしたら、いま一度確認していただいて、是非生活に取り入れていただけたら嬉しいです。