世界一不妊治療を受けている日本人‼男女のどちらに原因があることが多いのか?
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赤ちゃんを望む夫婦にとって赤ちゃんがなかなかできないのはつらいことですね。
不妊治療を受けている人の人数が、日本は世界で1位といわれていて、日本のカップルの6組に1組が何らかの不妊治療を経験しているというデータがあります。
しかし、結婚して夫婦が赤ちゃんを望めば当たり前に妊娠ができるという認識を持っている人が多いという現状があります。不妊についての知識がないことで、赤ちゃんを望んでいるのになかなか赤ちゃんに恵まれない夫婦の心を傷つけてしまっていることに気づいていない人も多いのではないでしょうか。
そこで、不妊に悩む人の現状や不妊症の原因、日本の不妊治療についてご紹介します。赤ちゃんを望む人も周りにいる人も、不妊症についての正しい知識を知っておきましょう。
そもそも不妊症とは?
一般的に避妊をせずに普通に夫婦生活(性生活)をしていた場合、1年以内に妊娠する確率は9割だといわれています。つまり、避妊をせずに子どもを望んでいる夫婦であれば、1年以内に妊娠するという人がほとんどだということです。
そのため、避妊をせず普通に夫婦生活を営んでいるのに、1年経っても妊娠しない場合は、不妊症と診断されることが多いようです。2年以内に妊娠する確率は100%ともいわれているので、避妊なしで夫婦生活をしているのに、1年経っても妊娠しない場合は、『不妊症』と判断してもよいでしょう。
不妊の原因の半数は男性側にもある!?
妊娠をした場合、おなかの中に赤ちゃんを宿すのが女性なので、不妊の原因は女性にあると思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。しかし、WHO(世界保健機構)が発表したデータによると、男性が24%、女性が41%、両方に原因がある場合が24%、不明11%という結果が出ています。
つまり、不妊の原因は男性側と女性側の比率は半々ということです。なかなか赤ちゃんに恵まれずに不妊治療を検討する場合、その時点では男性に原因があるのか、女性に原因があるのかわかりませんね。
自分に原因があることがわかってしまうと、原因があった方が負い目を感じてしまうこともあります。しかし、不妊治療はどちらかが頑張って治療するものではなく、夫婦で一緒に乗り越えることが大切です。不妊症の可能性があり、検査や治療を希望する場合は、夫婦で検査を受けて早めに対策を取ることで妊娠の可能性をあげることができます。不妊検査は夫婦そろって診察を受けることをおすすめします。
不妊症の主な原因とは?
不妊症になってしまう原因は、実ははっきりとわからないことが多いです。なぜかというと、検査をしても男性側(精子)にも女性側(卵子)にも特に異常がなくても、妊娠しないことがあるからです。仮に、もしかしたらこれが原因かもしれないという内容がわかったとしても、妊娠ができないという原因として確定するのが難しく、不妊症になっている原因は、医学でも解明できていないことも多いのが現状です。
そのため、日本ではステップアップ治療が行われることが多いです。妊娠しない原因がわからないため、妊娠しやすい環境を作りどの段階で妊娠できるかを確認しながら進めていく治療法です。
ステップアップ治療とは、タイミング法→排卵誘発→人工授精→体外受精→顕微授精のように治療方法を徐々にステップアップして妊娠に至るように治療を行う方法です。
しかし、一度の治療で妊娠に至らないこともあります。不妊の原因を特定することも難しいため、何度も治療を行なわなければいけないケースも多くあります。不妊治療に高額な医療費が必要になってしまう背景にはこのような理由があります。
無理なダイエット経験やストレスが不妊症の原因になることもある
女性の場合、若い頃に無理なダイエット経験をしたことが原因で不妊症になってしまうことがあります。他にもストレスなども不妊症の原因になることもあります。不妊症の場合、ダイエット経験やストレスが妊娠できない直接の原因になっているわけではないので、不妊症の原因として確定されないこともあります。
しかし、なかなか赤ちゃんができず、不妊症の検査受ける場合は、過去に無理なダイエットの経験や過剰なストレスを感じていた時期があった場合は、あらかじめ医師に伝えておくことをおすすめします。
不妊症の原因と考えられる、晩婚化、晩産化
日本では、初婚年齢が年々高くなっていて、晩婚化、晩産化が進んでいます。不妊症の原因の1つにこの晩婚化、晩産化の影響があるといわれています。
女性の場合、卵子の元となる原子卵胞は母親の胎内にいるときにすでに作られています。そのため、女性の年齢が高くなればなるほど、卵子が劣化してしまい、妊娠がしづらくなってしまうということもあるのです。そこで、女性の卵子について、もう少し詳しくご説明します。
女性の卵子は、母親の胎内にいるときにすでに一生分の卵子の数が決まっている
女性の卵子の数は、自分が母親の胎内にいるときにすでに一生分の卵子の数が決まっているということをご存知ですか?
卵子を育てる袋のことを卵胞(らんぽう)といいますが、この卵胞の元になる原子卵胞を女性は産まれるときに卵巣に200万個蓄えているといわれています。
200万個の原子卵胞は、初潮をむかえる頃までに170万個~180万個が消滅してしまうのだそうです。つまり、赤ちゃんを産むことができる年齢になる頃までに20万個~30万個まで減少してしまうということになるんですね。さらに、1回の月経周期で約1,000個ずつ減り続けていきます。
つまり、女性の卵子の数は1日に20~30個ずつ減り続け、卵子の数がゼロになってしまうと、妊娠の可能性もゼロになってしまいます。女性が妊娠可能な期間は、閉経前のおよそ10年前までだといわれています。
閉経は、個人差があります。40代初めに閉経を迎える人もいますし、平均的には52~3歳だといわれています。このことから、30代初めから40代初めまでが女性が妊娠可能な期間だということがいえます。
ただし、卵子の元となる原子卵胞は女性が母親の胎内にいるときにすでにできているので、女性の年齢が高くなればなるほど、卵子の状態も古くなってしまいます。そのため、正常に排卵があったとしてもうまく受精されなかったり、分裂が行われず妊娠に至らないというケースもあるのです。
男性が原因で不妊症の場合はどのようなケースがあるのか
男性の場合、精子は年齢が高くなったとしても日々生産されているため、女性のように年齢が高くなると精子が古くなってしまうということはありません。男性が原因で不妊症になってしまう原因には次のようなものがあります。
- 乏精子症・・・精子の濃度が低い
- 精子無力症・・・精子の運動率が悪い
- 精子不動症・・・精子の運動率が0%
- 精子奇形症・・・精子の奇形率が高い
- 膿精液症・・・白血球が多い
- 無精子症・・精液中に精子がいない
精子の状態は、ストレスや睡眠不足などによっても影響されるため、1度の検査で判定するのではなく、複数回検査をして確認するほうがいいといわれています。
男性の場合、タイミング法のストレスが不妊の原因になってしまうこともある
タイミング法とは、検査などの結果から排卵日を予測し、医師の指示のもとで性交を行い、妊娠することを目的として行う治療法です。そのため、医師から指示があった日に必ず性交を行わなければいけないということがストレスになってしまい、勃起不全になってしまい、性交ができなくなってしまうこともあります。
タイミング法が原因だけではなく、日本において、勃起不全で悩んでいる男性は980万人もいるといわれています。特に40歳代では20%の人がかかっているといわれていて、年齢が高くなると有病率があがることもわかっています。
勃起不全は、不妊症などの治療などのときも起こる可能性もありますが、原因はひとそれぞれです。勃起不全に関しては、薬による治療も行うことができますので、病院に相談してみてください。
不妊をオープンに語れない現実も不妊症を増やしてしまう原因?
不妊について家族や友人に話すことができるか?という問いに対して、話すことができないと答えた人の数は、日本が一番多いという調査結果があります。つまり、不妊に悩んでいる人は、家族や周りの人に相談することもできず、本人たちだけで悩んだり、苦しんだりしていることが多いということです。
それに加えて、不妊に対する知識や理解していない人も多く、日本ではいまだに不妊の原因は女性だけにあるという偏見を持っている人も多くいます。
不妊症の知識があれば、早く検査を受けることもできますし、治療をすることも可能です。しかし、不妊をオープンにできないという現実が、赤ちゃんができないということを悩んでいても周りに相談することも、検査に早く行くという機会も失い、結果として不妊治療を受けてもなかなか妊娠できないという結果になっていることもあります。
結婚をすると『赤ちゃんはまだなの?』がストレスになってしまうことも
昔は結婚する年齢も早かったので、結婚をすると子どもがすぐにできるというのも当たり前の時代があったのかもしれません。そういう時代が影響しているせいか、結婚をすると挨拶のように『赤ちゃんはまだなの?』といわれてしまう人も多いのではないでしょうか。
もう少し2人の生活を楽しみたいと考えていたり、もう少し仕事を頑張りたいと思っていて、子どもがいますぐほしいと思っていない夫婦の場合はまだいいかもしれませんが、今すぐ子どもがほしいのに、できない夫婦にとって『赤ちゃんはまだなの?』という周りの人の言葉は本人にとってかなりのストレスの原因になることがあります。
不妊症の原因は明確にならない場合が多いのですが、精神的なストレスが不妊の原因になることもあります。
不妊を周りに伝えることができれば、このようなケースを減らすことにもつながりますが、現実問題としてまだまだ不妊症に対する理解が低いことも不妊症の原因の1つかもしれません。
不妊症を減らすために必要なこととは?
不妊症の原因はわからないことも多いのですが、避妊をしていないのに夫婦生活のある夫婦が1年経っても妊娠に至らない場合は、不妊症の可能性が高いという正しい知識を知ることが大切です。
なぜならば、晩婚化に伴い結婚の年齢が年々高くなっていることに加え、女性の卵子は年齢とともに劣化をしていきます。つまり、年齢が高くなればなるほど妊娠しづらくなってしまうということです。不妊症の可能性を早く知ることができれば、早く検査を受けることもできますし、早く治療を開始することもできます。
早く治療を受け始めれば、それだけ妊娠の可能性を高めることができます。
妊娠は、誰もがすぐにできるものではありません。特に結婚した年齢が高ければ高いほど、妊娠しにくい状態になっているという現状もあります。また、不妊症の原因は、女性だけではなく男性も女性と同じ割合で不妊の原因になっていることがあります。
結婚をしたときに、妊娠や不妊に対しての知識を得ること、また周りの人に知ってもらうことで、不妊症の治療も受けやすくなっていくのではないかと思います。
不妊症の治療を会社の人にも理解してもらう方法
不妊症についての理解がない人が多いという説明をしましたが、不妊治療と仕事の両立が難しく不妊治療のために16%の人が離職しているという結果があります。しかし、自分の会社の人が退職してしまいますと、会社側も大切な人材を失うことにもなりますし、不妊治療には高額な医療費が必要になることも多いです。できれば仕事を失わずに治療を受けられれば、安心して不妊治療を受けることができますね。
厚生労働省では、事業主に不妊治療についての理解を深めてもらうためにリーフレットを作成しています。
厚生労働省:事業主向けリーフレット「仕事と不妊治療の両立支援のために~働きながら不妊治療を受ける従業員へのご理解をお願いします~
また、仕事と不妊治療の両立についてのページなどもありますので、このようなものを活用して不妊症についての理解を深めてもらうことで、妊娠の可能性が高めることにつながるのではないでしょうか。
出典:厚生労働省ホームページ: 仕事と不妊治療の両立について
不妊症の治療を行う場合はリスクも理解しておく必要もある
精子の動きが悪いことが原因で不妊症になっている場合、卵子と精子を自然に受精することが難しい場合、顕微授精を行うことがあります。この場合、通常なら精子の動きが悪く本来なら受精できない精子を、人の手によって受精させることもあります。
その結果、産まれてくる赤ちゃんに障害が出てしまう可能性はゼロではありません。生殖医療は年々進化しています。すべての顕微授精や高度医療が危険なわけではありません。しかし、不妊治療を行う場合はこのようなリスクもあることを理解した上で治療を受けることも大切です。
2015年5月にアメリカの権威ある学術誌「American Journal of Public Health」に掲載された論文「生殖補助技術と自閉症の関連性」によると、自然妊娠で生まれた子どもに比べて、不妊治療の末に生まれた子どもは、「自閉症スペクトラム」を発症するリスクが2倍になるというショッキングな内容も報告されています。
不妊症の人が妊娠を希望して不妊症の治療を行い妊娠に至る嬉しい報告もたくさんあります。しかし、不妊治療を行う場合は、このような厳しい現実も受け入れる覚悟も必要になるのではないでしょうか。
まとめ
日本は、不妊症の治療を受けている人の人数が世界一だといわれています。その反面不妊症の原因や不妊症についての正しい知識がなく、いまだに不妊の原因は女性だけにあるという偏見を持っている人も多くいます。
不妊症についての正しい知識がない人が多いことも、不妊症の人数を増やしてしまう原因の1つになってしまっているような気がします。不妊治療は、できるだけ早く始めることが妊娠の可能性を高めることにつながります。
周りの人に伝えにくかったり、不妊治療に対する理解が少ないので、なかなか検査や治療に踏み切れないという人も多いと思います。その場合は、不妊治療に対する内容や理解を求めるリーフレットやホームページを厚生労働省で作成していますので、必要に応じて利用してみてはいかがでしょうか。
日本でも不妊症に対する知識や理解が高まり、不妊治療を望む人が治療が受けやすい環境になってほしいと思います。そして、不妊治療を受ける人は、治療についてのリスクなども十分理解した上で治療をすることも大切です。