妊婦の楽な寝方“シムス体位”とは?妊娠中の仰向けはNG?理想的な寝姿勢と抱き枕について
妊娠中、お腹がどんどん大きくなるにつれ「息苦しくて眠れない」「寝苦しくて熟睡できない」など、睡眠トラブルに悩まされる人がとても多いです。そんな妊婦さんの寝方としてオススメされているのが“シムス体位”です。
この記事では、そもそも「シムス体位とは何なのか?」に始まり、「どんな効果があるのか?」「具体的なやり方」「右下or左下どっちがいいのか?」「仰向けは絶対NGなのか?」などなど、シムス体位について徹底解説していきます。あなたの理想の寝方を見つけるご参考になれば幸いです。
もくじ
シムスの体位(姿勢)とは?
シムスの体位(姿勢)は19世紀に、アメリカの婦人科医 J・マリオン・シムズ(J. Marion Sims)が考案した姿勢のことです。英語表記では「Sims’ position」
シムズが考案したので「シムズの体位」ですが、一般的に濁点(゙)なしの「シムスの体位」と呼ばれているようです。
具体的な体勢はWikipediaには次のように書かれています。
身体の左側面を下にして横向きに寝て、左臀部と左脚をまっすぐに伸ばし、右臀部と右脚を曲げる。この姿勢は、側臥位とも呼ばれる。(出典:Wikipedia)
シムス体位は、元々は直腸検査をするときや、「昏睡体位」「回復体位」とも呼ばれ、意識がない要救護者の呼吸確保のための姿勢でしたが、妊婦さんにも役立つとわかり「妊娠中期以降の妊婦さんの安楽体位」としても用いられるようになりました。
シムス体位は妊婦の理想の寝方?嬉しい3つの効果とは?
シムス体位は「妊娠中期以降の妊婦さんの安楽体位」ということでしたが、実際どんな効果があるのか見ていきましょう。
【1】血液の循環が良くなる
妊娠中期を過ぎると赤ちゃんがどんどん大きくなってきますので、仰向けだと息苦しくなって寝付けなくなる人も多いです。大きくなった子宮がお腹を圧迫することが原因ですが、人によっては「仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群」といって、急激な血圧の低下を引き起こし、「顔色が悪くなる」「吐き気がする」「嘔吐する」「気を失う」「冷や汗がでる」「心拍数が増加する」などの症状がでてきます。
これは、次の図のように、大きくなった子宮が下大静脈という大きな血管を圧迫し、心臓への血流が悪くなることが原因です。
出典:san-kiso.com
シムス体位をとることで血管の圧迫はなくなり血流が良くなるので、睡眠の質も良くなるケースが多いです。
【2】腰痛の軽減
「妊婦が腰痛になる3大原因とは!?妊娠中の腰痛対策ワザ13選まとめ」の記事に書いたように、よくある妊娠中のトラブルの1つが腰痛です。
妊娠中の腰痛の主な原因は「ホルモンの影響で緩んだ骨盤を支えるため、腰の筋肉に大きな負担がかかるから」「大きくなったお腹とのバランスをとるために、反り腰という腰に負担がかかる姿勢になるから」のように、腰に大きな負担がかかることです。
シムス体位をとることで腰への負担を減らすことができるので、寝ている間は腰痛の症状も緩和されやすいです。腰がツラくなったらシムス体位になってみましょう。
【3】リラックスできる
シムス体位は「回復体位」とも呼ばれ“要救護者の呼吸確保のための姿勢”と説明したように、身体に負担のない姿勢だといえます。血液の循環が良くなるので呼吸も楽になりますし、腰にも負担のない体勢だからリラックスしやすいです。寝るときだけでなく、リラックスしたい時にもオススメです。
などなど、シムス体位は妊婦さんにとって、理想に近い寝方だと言ってよいでしょう。
シムス体位の具体的なやり方5ステップ!右下or左下どっちがいい?
シムス体位になるための具体的なステップをご紹介します。
- 【step1】左側を下にして横になります。
- 【step2】左足はまっすぐに伸ばすか、軽く曲げます。
- 【step3】右足は足の付け根から曲げ、膝も曲げ、左足より前にくるようにします。
- 【step4】左腕は曲げて枕のように頭の下に置くか、左肩を後ろに抜いて背中側にまわします。
- 【step5】右腕は軽く曲げます。
妊婦さんがシムス体位をとる場合、体勢を安定させるために抱き枕を使用することをオススメします。抱き枕がない場合は、クッションや座布団、毛布などを挟むのも良いでしょう。
step4で左腕を背中側にまわす場合は、うつ伏せに近い形となりますので、お腹を圧迫しないよう調節して下さい。
良かったら次の動画も参考にして下さい↓
妊娠中のシムス体位は右下or左下どっちがいい?
妊婦さんがシムス体位をする場合、基本的には「左下にしましょう!」と言われます。
それは、人間の身体の中心に大きな動脈と静脈が通っているのですが、
- 動脈~左側。弾力性がある、ゴムのように伸び縮みする。
- 静脈~右側。動脈に比べて弾力性がない、つぶれやすい。
という性質があるために、静脈をつぶさないようにしたいからです。
ですので、妊娠中のシムス体位は左下にするのが理想的といえます。ただ、人によって個人差はありますので、左下にこだわる必要はありません。
「お腹の中の赤ちゃんが仰向けになるような姿勢が楽、それによって左右の向きやすさが変わる」という説もあるので、右下でも左下でも、より楽な方向で寝るのが良いでしょう。
妊婦の寝方で“仰向け”は絶対NG?
妊婦さんの寝方として一般的には「お腹が大きくなってきたら横向きがオススメ」とされているので、「仰向け寝が楽だけど、赤ちゃんに悪影響があったらどうしよう・・・」と不安に感じている人も多いようです。
ただ、妊娠中の仰向け寝については、本人が楽で寝苦しくなく、身体の不調がなければ、特に気にする必要はないでしょう。仰向けで寝たからといって赤ちゃんに悪影響があるわけではありません。
ただ、仰向けに寝て、朝起きたときにいつもお腹が張っているようだったら気をつけた方が良いです。自分の感覚としては楽だと思っていても、身体には負担がかかっているのかもしれません。
ですので様子を見つつ、仰向けで寝るかシムス体位で寝るかを、調整していったら良いかと思います。
まとめ:妊娠中は自分が楽な寝方を見つけましょう!
以上、妊婦さんの理想の寝方“シムス体位”について解説させていただきました。
妊娠中は「○○はダメ!」という制限がたくさんあって、寝方まで制限されるのはツラいことと思います。
ただ、基本的な考え方として「あなた自身がリラックスできる姿勢が一番」ですので、仰向けでも横向きでもシムス体位でも、あなたに合った寝方を見つけていきましょう。お腹の中の赤ちゃんの成長によって、楽な姿勢も変わってきますので、その都度あなたに最適な寝方を探していただけたらと思います。
もし、どんな姿勢でもツラかったり、お腹が張るなどの不調があれば、早めに担当の医師に相談することをオススメします。