日本の風習。なぜ戌の日に安産祈願?いつ誰とどんな服装で行く?お金や持ち物は?
「戌の日」という言葉を聞いたことがありますか?
多くの方は、妊婦さんになって初めて知ったかもしれませんね。
日本に古くからある風習で、ある戌の日に安産祈願行く、というものがあります。一般的には、妊娠5カ月を迎えた最初の「戌の日」に社寺にお参りし、安産祈願をするのですが、そもそも、どうしてわざわざ戌の日にお参りに行くのでしょうか?
どこにお参りに行ったらいいのか?また、誰と行ったら良いのか、服装は?そもそも、戌の日っていつ?多くの疑問があるかと思います。
ここでは、まず「戌の日」とはいつか、なぜ「戌の日」なのか、お参りの仕方など、戌の日の安産祈願の歴史などを交えながら、説明していきます。
もくじ
戌の日の安産祈願とは?
戌の日っていつ?何をするの?
まず、「戌の日」って普段の生活をしている中では、ほとんど意識することはありませんので、妊娠して初めてこの言葉を聞く方もいらっしゃいますよね。
日本の暦には十二支がそれぞれあてられており、「戌の日」とは十二支の「戌」に当たる日をさします。通常、十二支は「年」の干支で知られていますが、この十二支は「月」や「日」にも振り当てられていますので、「戌の日」は12日に1回巡ってくるわけです。暦と言えば「大安」や、「仏滅」などの六曜を思い浮かべる方が多いかと思いますが、安産祈願に関して六曜は関係がありません。そのため、「戌の日」がたとえ「仏滅」だったとしても気にする必要はありませんので、安心してお参りに行かれてください。
さて、この「戌の日」ですが、日本には「戌の日に安産祈願をする」という風習があります。一般的に、妊娠5カ月目となる月の戌の日に腹帯(岩田帯)を巻いて安産祈願をするというものです。
現在のお参りの流れとしては、安産祈願ができる神社やお寺にお参りし、初穂料をおさめたあとお祓いやご祈祷を受けます。そして腹帯やお守りなどの授与品をいただく、という流れが一般的になっています。
なぜ「戌の日」にお参りに行くの?
では次に、多くの方が抱く素朴な疑問、「何故、戌の日に安産祈願をするの?」ということについて簡単に説明します。
なぜ戌の日か、というと、言葉の通り「犬」に関係しています。犬はたくさんの子を産み、また、お産も軽いと言われています。そのため、安産の守り神として昔から人々に愛されてきました。
そして、安産の象徴である犬にあやかろうと、12日に一度訪れる戌の日に、ここまで無事に赤ちゃんが成長してきたことへの感謝と、これからの妊婦さんと赤ちゃんの無事を願い、安産祈願を行うようになったと言われています。 その他にも、犬はあの世とこの世とを往復できる動物と考えられていることにも関係している、と言われています。
ただし、妊娠5カ月目にお参りにいくのが一般的とは言え、必ずこのタイミングで行かなくてはいけない、という決まりはありません。妊娠5ヶ月目といえば、母子共に安定期に入り流産の危険性も少なくなる時期ではありますが、妊娠中が日々体調も変化するものです。そのため、妊娠5カ月目に安産祈願に行く、というのは大まかな目安として覚えておくぐらいにして体調を優先しましょう。
戌の日のお参りは誰と、どこに行ったらいいの?
さて、戌の日の安産祈願ですが、誰と一緒に行ったら良いのか、迷うところです。そして、神社といっても数多くありますので、どこでも良いのか、これも迷います。
昔は妊婦さんの母親が同行することが一般的だったようです。しかし、現在は実家から離れて暮らしているなど、なかなかお母様と一緒にお参りに行くのは難しい場合もあります。
最近では、やはりご夫婦でお参りに行くのが主流のようですが、なかには妊婦さん1人だけでお参りするケースや、友だちと行く方もいるようです。皆様、ご自分の生活スタイルに合わせてお参りをされているようです。
次に、お参りはどこに行ったら良いのか、ということについてですが、安産祈願で有名な神社のひとつに「水天宮」があります。「水天宮」の名称の神社は全国にあり、総本宮は福岡県にある「久留米水天宮」になります。
他に安産祈願で知られる有名なところでは、「子安神社」「八幡宮」などの神社、「子安観音」「鬼子母神堂」などがあります。
その中でもとりわけ東京の日本橋にある「水天宮」は高い人気を誇り、「戌の日」には妊婦さんの行列ができるほど混み合うとのことです。元気なときであれば待つのは苦になりませんが、たとえ安定期に入っていたとしても妊娠中は身体がデリケートになっているので、無理は禁物です。
これらの神社やお寺が遠い場合には、通い慣れている近所の神社仏閣に参拝先を変更するなど代案を考えてみるのも良いでしょう。なにより、都合や体調に合わせて選ぶようにしましょう。
戌の日の安産祈願の風習は昔からあるの?
戌の日の安産祈願の風習とは?
ここまで、「戌の日」について、なぜ「戌の日」にお参りに行くのか、などについて簡単に説明をしました。
さて、この風習はいつ頃に始まったのでしょうか。
「戌の日のお参り」 は「帯祝い」ともいいます。帯はお腹にまく腹帯のことですが、これは「岩田帯」とも呼ばれています。
この帯は、妊婦さんの実家から送られるのがならわしとなっていて、もともと、帯祝いの正式な風習では、子宝に恵まれた夫婦に「帯役」を依頼し、仲人を招き、両家の両親にも同席してもらうなかで、帯を巻く儀式を行います。そして、この帯を巻いて、安産祈願をしに神社に参拝にいき、その後は親族による宴が開かれる、というのが一般的でした。
しかし現代では、ここまで正式な方法でされる方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。まず、お仲人さんを含めた“おつきあい”そのものが減っていますし、双方の親族から離れて暮らしている、仕事をしているなど、現代の生活環境ではなかなか難しいでしょう。
戌の日の安産祈願はいつからあるの?由来は?
次に、この戌の日の安産祈願ですが、いつ頃から始まったのでしょうか。
そして何が由来となったのでしょうか?
簡単に、歴史を辿ってみましょう。
この儀式では、妊娠五ヶ月目に入った妊婦さんが、腹帯を締めて出産の無事を祈りますが、この風習がいつから始まったのか、その起源は定かではありません。
古くは「古事記」に、神功皇后が三韓征伐に行かれた際、子供(のちの応神天皇)を身ごもっており、出産しそうになった神功皇后が石を挟んだ腹帯を巻いてそれをしずめたとの記述があります。
また、妊婦が帯をしめることには妊娠していることを外形的に表現し、それを地域共同体(村)に知らしめる儀礼的意味合いがある、との説もあります。
近世の日本では、様々な理由による「胎児の間引き」が多く行われた時代もありましたが、帯祝いを済ませた赤ちゃんは、無事に育てられたという記録もあるようです。昭和37年の調査では、妊娠5か月目の戌の日に腹帯をすることが一般的になっていたようですが、江戸時代なかばまではそうした習俗はなかったとも言われています。
実は、江戸以前は「子の日」に安産祈願が行われていたようです。鼠も多産であるため、子孫を増やす力があると信じられており、その力にあやかろうとしたのかもしれません。
こうしたものが長い間に言い伝えられていく中で、形を変え、現在の「戌の日の安産祈願」につながったのではないか、と言われています。
なぜ腹帯を巻くの?どういう意味があるの?
さて、戌の日のお参りに欠かせない「帯」(腹帯)ですが、そもそもなぜ帯をまくのでしょうか?
腹帯をまくことの効果として、腹帯を巻くことで大きくなったお腹が固定されて動かないようになり、楽になるということがあげられます。また、腹帯をまくことで、体のバランスがうまく取れるようになり、お腹の赤ちゃんへの衝撃をやわらげるという効果もあるようです。さらに、腹帯をまくことで、お腹の冷えを予防できるという効果もあります。妊娠中の体は、おなか周りだけが冷えている場合も少なくないのです。
ちなみに、さらしの布をぐるぐるとお腹に巻いて赤ちゃんを安定させて、保温するのが「腹帯」で、この腹帯を使いやすくしたものが、「妊婦帯」となります。こちらほ、脱ぎ着がラクなので、ふだん使いにおすすめです。
戌の日安産祈願の流れと、戌の日に行かれない場合
神社で安産祈願
最後に、戌の日の安産祈願の流れについて説明しますね。初穂料や、お参りの際の服装なども順番に説明していきます。
まず、繰り返しになりますが、「戌の日」は12日に1度のペースでめぐってきますが、一般的に妊婦さんは妊娠5カ月目の「戌の日」に安産祈願を行います。
神社に行き、お祓いと安産のご祈祷をしてもらい、同じくお祓いやご祈祷をしてある腹帯やお守りを受け取ります。神社によって腹帯は、販売されてない場合もありますので、事前に確認しておきましょう。自分で持参する場合は、腹帯を巻いた状態でお祓いやご祈祷を受ける流れになります。
反対に、腹帯がすでに用意されていたり、販売している神社では、事前に購入しておいた腹帯の持ち込みを禁止しているところもあります。そのように持ち込みを禁止している神社では、神社で用意されているものを使うという決まりがあるところもあります。その場合は、先に説明した通り、ご祈祷後に腹帯を受け取ることになります。
安産祈願の前には、参拝予定の神社に連絡を入れて確認しておくと安心でしょう。
初穂料の相場はいくら?服装は?
お参りの際、お祓いやご祈祷をしてもらうのにはいくらくらいかかるのか、気になる方も多いかと思います。
神社でお祓いやご祈祷をして頂く際、神社に納めるお金のことを、「初穂料」といいます。安産祈願のお祓いやご祈祷をお願いする時も、同じくこの初穂料を納めます。
たいていは、社務所でご祈祷の受付を行う際に手渡すことになります。初穂料は、紅白の蝶結びのついたのし袋に納め、上段に「初穂料」と記したものを事前に準備しておきます。初穂料は神社によってそれぞれ設定が違いますが、相場は3000円~10000円程度となります。最初から初穂料を設定していたり、または、腹帯の料金が含まれているケースもあるので、事前に確認をするのがオススメです。
服装に関しては特に決まりはありませんが、シンプルなワンピースなどの服装で参拝する人が多いようです。ただし、妊娠さんでお腹も大きいですので、無理にワンピースやスーツなど着る必要はなく、肌の露出が多い服装、サンダル、ジャージなど、カジュアル過ぎやだらしのない服装は避けるなど、常識の範囲内で失礼のない服装で大丈夫です。
旦那様がご一緒の場合、男性はスーツスタイルが無難です。
必ず戌の日じゃなきゃだめ?行かれない場合は?
ここで、一つ大切なことは、戌の日に安産祈願をするというのは、あくまでも目安だということです。
妊娠月や戌の日、仏滅や大安という、いわゆる暦に神経質になりすぎる必要はありません。安産祈願は、「安定期に入った体調の良い日」に行うということが重要です。
体調がよくなかったり、仕事が忙しいなどで妊婦さん本人が直接行けないこともあります。また、寒い冬や、逆に熱中症が怖い真夏などは、体調が良好でも妊婦さんの体には負担となります。そうした場合は無理して参拝せず、旦那様や両親、きょうだいなどの代理を立てるのが良いですね。お守りや腹帯などのセットを貰うだけなら代理の方でも問題ありません。
代理に参拝してもらう場合は、予定日や夫婦の住所氏名、生年月日などを伝えておきましょう。中には郵送で受け付けてくれる神社もあるので、問い合わせしてみても良いかもしれませんね。
まとめ
以上、戌の日の安産祈願について、その由来なども含めざっと説明してきました。
妊娠してから、「気が付いたらもう5カ月」、と思う方も、「まだ5カ月」と思う方もいらっしゃるでしょう。ここまで母子共に無事に過ごせてきたことを感謝し、そして残りの妊娠期間と出産を無事に乗り越えられるように安産祈願をすることは、ご本人にとっても周りのご家族にとっても大切なことでしょう。
今でこそ、出産で命を落とすお母さんも赤ちゃんも少なくなりましたが、出産は自分だけの力ではどうにもできないことが起きる場合もあります。特に、現代より医療が発達していなかった昔であれば、さらに大きなリスクがあり、まさに出産は命がけだったはずです。
少しでもそれを軽減したい、母子共に無事に出産を乗り越えたいという思いが、神さまの力を借りることにつながったのかもしれません。