生まれたての赤ちゃんが黄色くてもびっくりしないで。新生児黄疸(おうだん)の原因や症状、黄疸の種類など
生まれたばかりの赤ちゃんの肌の色が黄色っぽい、なんてことよく見かけませんか?
それは「新生児黄疸(おうだん)」と呼ばれるもので、新生児の赤ちゃんだったら珍しくない症状です。しかし、自分の赤ちゃんに黄疸の症状があったら驚くことでしょう。日本人の90%の赤ちゃんが発症すると言われていますので安心してください。
今回は新生児黄疸の原因や症状、種類や治療方法、そして新生児黄疸になりやすい子など、新生児黄疸について詳しくまとめたので参考にしてみてください。
もくじ
新生児黄疸とは?新生児黄疸が起きる原因と症状
新生児黄疸が起きる原因は?
まず、胎児は肺で呼吸しているわけではなく、胎盤を通して酸素を体内に取り込んでいるのはみなさん知っていると思います。しかし胎盤を通して酸素の取り込むためには、胎児の血液中にある赤血球を増やす必要があります。
そうすると、赤ちゃんが生まれる時は赤血球が多い状態で生まれることになりますよね?
赤ちゃんが生まれてからは肺で呼吸するようになるので、体内で増えた余分な赤血球を分解する必要があります。その赤血球を分解するときに出る「ビリルビン」という物質が、新生児黄疸にとても大きく関わってくるのです。
「黄疸」と聞くと肌や目の色が黄色くなっているイメージがあると思いますが、このビリルビンは黄色い色素を持つ物質です。ビリルビンは肝臓で処理され体の外に排出される物質のため、体内でビリルビンの濃度が高くなることはないのですが、ビリルビンをうまく外に排出できず、体内で濃度が高まってしまうと、肌や白目の色が黄色くなってしまい黄疸の症状として出てしまいます。
生まれたばかりの自分の子供を見て「うちの子黄疸!?」とびっくりするママさんも多いと思いますが、新生児黄疸は日本人の90%の赤ちゃんが発症すると言われています。
まだビリルビンを体の外に出し切っておらず、体内に残っているのでそのような症状が現れるのです。殆どが生理的現象なので生後2,3日から症状が始まり4,5日目をピークとして、1~2週間かけて徐々に黄疸は消えていきます。
殆どは心配いらない黄疸ですが、約2割の赤ちゃんは治療が必要になることがあります。
次のような症状がある場合、主治医の先生に相談してみましょう。
治療が必要な黄疸の症状
うんちが白くなる
通常、生後1~2週間でビリルビンは体の外に排出され黄疸は消えていきますが、生後2週間を過ぎても黄疸が残り、排便が白い時は「胆道閉鎖症」の場合があります。
すぐに病院に診てもらいましょう。
起きている時間が少ない、発熱がある
黄疸は症状が強くなると、倦怠感も強くなるようです。赤ちゃんの起きている時間が少ない、ミルクor母乳の飲みが悪い、呼吸が早い、38度以上の熱がある、不機嫌、といった症状が見受けられる場合は、黄疸が強くなっている可能性があるので早めの受診をおすすめします。
新生児黄疸だけじゃない!?黄疸の原因は他にもあった!
黄疸が現れる原因は、血液中のビリルビン濃度が高くなってしまうことですが、様々な原因によってビリルビンの濃度が上がります。では、多くの赤ちゃんがなる新生児黄疸の他にどのような黄疸があるのでしょうか。発症する原因と一緒にご紹介したいと思います。
母乳性黄疸
多くの新生児が発症する新生児黄疸は、生後1~2週間かけて徐々に消えていきますが、完全母乳育児で育った赤ちゃんは生後一ヶ月になっても黄疸が消えない場合があります。母乳で育った赤ちゃんにしか起きない黄疸なので「母乳性黄疸」と呼ばれています。
母乳には、免疫を強くしたり赤ちゃんに必要な栄養がたくさん含まれていますが、肝臓の酵素の働きを弱める女性ホルモンも多く含まれています。肝臓の働きを弱めてしまうと赤ちゃんの体内にある余分なビリルビンの処理が遅れてしまい、黄疸の症状が普通よりも長引いてしまうのです。
母乳性黄疸の場合、症状は新生児黄疸よりゆっくり消えていきますが、もしかしたら別の原因もあるかもしれないので生後一ヶ月をすぎても黄疸が治らない場合、母乳からミルクに切り替えて様子を見てみたり、一ヶ月検診で相談してみましょう。
新生児溶血性黄疸
新生児溶血性黄疸の原因は大きく4つに分けられます。
- ママと赤ちゃんの血液型が異なることで起こる黄疸
- 母体の病気によるもの
- 子どもの赤血球の先天異常
- 薬剤や感染によるもの
その中でもママと赤ちゃんの血液型が異なること(血液型不適合妊娠)が新生児溶血性黄疸の原因で最も多いです。母親がO型の場合に子どもがA型やB型といったABO式血液型不適合は3000人に1人の発症率と言われ、母親がRh陰性(+)で子どもがRh陽性(-)といったRh式血液型不適合は発症した際に重症化しやすいと言われているので注意が必要です。
異なる血液型に対する抗体が母体にできてしまい、それが胎盤を通して赤ちゃんに送られて行くため、赤血球が破壊されビリルビンが過剰に増加してしまうのです。結果、黄疸の症状が現れます。特に母体がRh陰性の場合に発症することが多いので、出産前から対応が必要です。
肝細胞性黄疸
新生児黄疸は1,2週間、母乳性黄疸は1ヶ月ほどで自然に消える黄疸ですが、それ以上長引く場合、何らかの原因で肝臓の機能が低下しているのかもしれません。肝臓の機能が低下するとビリルビンを処理することができなくなり黄疸の症状が出るのです。それを肝細胞性黄疸と呼びます。肝細胞性黄疸は最悪脳出血を起こす可能性があるので適切な処置が必要です。
閉塞性黄疸
腫瘍や結石、炎症などによって胆管が狭くなると胆道が閉塞し、胆汁が排出できなくなります。すると血液中のビリルビンが増加し黄疸の症状が出てしまうのです。このことを閉塞性黄疸と呼びます。
黄疸の症状の他に、赤ちゃんの尿が褐色、うんちが白っぽい、といった場合は閉塞性黄疸の危険性があるので注意が必要です。
ビリルビンはうんちに色がつく素となっており、そのビリルビンが胆汁の一部となって腸を通っているため通常のうんちは茶色になります。しかし、胆道が閉鎖しているとビリルビンが含まれる胆汁が通れないため、便に色がつかなくなり白いうんちが出るのです。
腸にいけなかった胆汁は、腎臓を通じておしっことして排出されるため、尿が褐色になります。閉塞性黄疸気づかずに放置してしまうと胆道がんや膵臓がん、胆石症といった病気になってしまい、手術が必要になってくるので早めの対応が必要と言えるでしょう。
新生児黄疸は治療が必要?
新生児の黄疸には様々なものがあり、原因も違ってきます。病的な黄疸の場合は早期的な治療が必要となってくるので、生理的な黄疸か、病的な黄疸かを見分けるために「経皮的ビリルビン検査」を行います。
皮膚の上からビリルビン濃度を測定する方法で、基準値を超えていると病的な黄疸が疑われる確率が高いです。新生児のビリルビン正常値は5mg/dl以下。生理的な新生児黄疸であれば、数値が13mg/dl前後になったあと、数日かけて正常値に戻っていきます。
しかし、数値が15mg/dl以上を超え続ける場合は、病的な黄疸が疑われるので血液検査などを行い治療していくことになるでしょう。早産や低体重で生まれた子(2500g以下の低出生体重児)は12mg/dl以上で病的な黄疸が疑われます。
生理的な新生児黄疸の場合、治療は必要ありませんが、ビリルビンの基準を超える場合は光線療法が行われます。
特殊な蛍光灯(青や緑の光)の光を赤ちゃんに当てることでビリルビンの構造が変化し、胆汁や尿として排泄させ、血液中のビリルビンの濃度を少なくする、という治療法です。
赤ちゃんはオムツ1枚と目隠しだけの状態となり、蛍光灯の光を浴びるので、見た感じは「日焼けサロン」のような感じです。昔はビリルビンの値を下げるために日光浴をするといい、といわれていましたが、日光浴は黄疸の治療法としては弱く、劇的な療養効果はないため、病院での光線療法を行うことがビリルビンの値を下げるのに効果的です。
日光浴をしないから黄疸になってしまった、治らない、ということはないので気にしすぎないようにしましょう。
光線療法を行ってもビリルビンの値が下がらないor日齢ごとに基準値を超えてしまう場合は体内の血液の一部を置き換える「部分交換輸血」や「ガンマグロブリン投与」が行われます。
通常排出されるはずのビリルビンが体内に長く溜まってしまうと、ビリルビンが脳内神経を破壊し「核黄疸」という病気になってしまう場合があります。ビリルビンの基準値を超えたまま3日以上過ぎてしまうと発熱、けいれんが現れ、1週間以上が過ぎるとグッタリとしてきます。
ここまで症状が進んでしまうと脳性麻痺、知的障害、難聴、最悪死亡してしまう危険性があるので早期発見が大事です。
新生児黄疸になりやすい子がいる?
黄疸には様々な種類があり、それぞれの原因も理解していただけたと思います。では、日本人の多くの赤ちゃんが発症する新生児黄疸ですが、その症状が強い子とそうでない子がいますよね。
どんな子が新生児黄疸に強くなりやすいのか、気になると思います。この見出しでは新生児黄疸になりやすい子(光線療法を行う子)の特徴をまとめたのでご紹介します。
早産や低出生体重児で生まれた赤ちゃん
早産で生まれた赤ちゃんや低体重で生まれた赤ちゃんは肝臓の機能が十分に発達していないためビリルビンがうまく処理できずに体内に溜まり、黄疸が強く出やすくなります。ビリルビンの値が低めでも黄疸になりやすいので光線療法を開始する基準が他の赤ちゃんよりも高いです。34週未満で生まれた赤ちゃんの殆どが光線療法を行っています。
感染症がある赤ちゃんや仮死で生まれた赤ちゃん
感染症のある赤ちゃんや仮死で生まれた赤ちゃんは先程記載した早産や低出生体重児のようにビリルビン値が低めでも基準値を厳しく設定しているため光線療法となる確率は上がります。
身内に新生児黄疸で治療を行った人がいる
新生児黄疸は遺伝することがあり、両親や兄弟に新生児黄疸が出ていた場合、生まれた赤ちゃんも新生児黄疸が出やすいようです。
頭血腫がある赤ちゃん
出産の際に吸引分娩や鉗子分娩といった外から力を加える分娩処置を行うと、血でできたたんこぶのようなものが赤ちゃんの頭にできます。それを「頭血腫」と呼びます。普通分娩でも頭血腫ができることもあるようです。頭血腫がある新生児は出血した血液を体内で吸収する際に血液をビリルビンに変えるため、黄疸の症状として出やすくなります。
ミルクや母乳をうまく飲めない赤ちゃん
ミルクや母乳をうまく飲めない赤ちゃんは、ビリルビンをおしっこやうんちとして体の外に出せないので新生児黄疸が強く出やすいです。哺乳量が少ないことが原因で新生児黄疸が出ている赤ちゃんは、哺乳量が保たれるようにミルクや母乳の回数を増やしたり、赤ちゃんが飲みやすいように工夫してみたりしましょう。
赤ちゃんも母乳を飲んだりミルクを飲んだりすることは慣れていません。その時は施設の助産師の人に相談してくださいね。
新生児黄疸のほとんどは生理的なもの!
生まれたばかりの自分の子供を見たときに、肌の色や目の色が黄色だとびっくりし不安になってしまうのは当然のこと。
しかし、新生児黄疸は珍しいものではなく、日本人の赤ちゃんなら90%近くの確率で新生児黄疸の症状が出る、と言われています。病的な黄疸もありますが早期発見・早期治療で治るものなので、数日経っても黄疸の症状に改善が見られなかった場合、慌てずに小児科の先生に相談をしましょう。
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