切迫早産ってどんな状態?原因や症状は?安静ってどうすればいい?
「切迫早産(せっぱくそうざん)」という言葉だけは聞いたことがあるという人も多いかもしれません。妊婦さんにとって、健診のときに医師から聞きなれない言葉を聞くと、不安になってしまうこともたくさんあるでしょう。
そこで、「早産」や「切迫早産」とは何か?原因や症状、また医師から安静の指示が出た場合の対処法についてご紹介します。
もくじ
早産とは?
早産とは、正産期と呼ばれている期間よりも早く出産することです。正産期は、妊娠37週0日から妊娠41週6日までの期間に出産することをいいます。日本の場合、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことを「早産」、妊娠22週未満の場合は「流産」となり、「早産」と「流産」を区別しています。
次の図が分かりやすいでしょう。
国によって「早産」や「流産」の区別に差がある理由は、国によって医療技術に差があるためです。日本では、妊娠22週に入ったあとの出産は、早産として扱われていますが、妊娠24週に入ってから早産として扱う国や、妊娠28週に入ってから早産として扱う国もあります。
赤ちゃんは早く産まれてしまうほど、生まれたあとに重い障害が出てくる可能性が高くなります。そのため、早産にならないように定期的に健診を受けて、早産になりやすい状況を早期に発見し、対策や予防をすることが大切です。
切迫早産とは?
切迫早産とは早産になる危険性が高くなっている状態、つまり早産になる一歩手前の状態になっていることをいいます。おなかの張りや痛みを伴う子宮収縮が規則的かつ頻繁に起こり、子宮口が開いて赤ちゃんが出てきそうな状態になってしまっているということです。
早産の項目でもご紹介しましたが、正産期に入る前の出産の場合、赤ちゃんが早く産まれれば産まれてしまうほど、重い障害が出てくる可能性が高くなります。そのため、切迫早産を診断された場合は、できるだけ長くお母さんのおなかの中にいられるような治療を行います。
お母さんの状態によって異なりますが、医師による治療と同時に自宅でできるだけ安静を保つように指示がある場合と、病院に入院して安静を保つ場合があります。
切迫早産になる原因とは?
早産の原因でもっとも多いといわれているのが「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」です。絨毛膜羊膜炎とは、妊娠中に膣の常在菌が上行性感染(菌が上に向かって移動して感染すること)によっておこる炎症性の疾患(病気)のことをいいます。
イラストのように、膣にあった常在菌が絨毛膜や羊膜に移動して炎症をおこします。感染を防ぐために体が防御反応を起こすのですが、絨毛膜や羊膜が炎症をおこしていると過剰に防御反応をおこしてしまい、前期破水や子宮収縮をおこす原因になります。
それが早産の原因になってしまっているのです。
他には早産や切迫早産の原因として、「多胎妊娠」「※子宮頚管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)」、「子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)」「子宮奇形」「母親の喫煙」などがあります。
※子宮頚管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)」・・・子宮口が緩く(ゆるく)自然に開いてしまう疾患
切迫早産の主な3つの症状とは?
切迫早産の可能性がある場合、どんな自覚症状があるのでしょうか。
おなかの張りや痛み
妊娠後期になると、おなかの張りを感じる妊婦さんは多くいます。ですが、しばらく休んでも張りがおさまらなかったり、下腹部に痛みを感じたりする場合は切迫早産の可能性があります。
いつもより強い張りを感じたり、30分以上張りが続く場合はすぐに医師に相談しましょう。
出血
正産期に入り、出産が近づくと「おしるし」といって出血がみられることがあります。
しかし、妊娠37週に入る前に出血があった場合は、切迫早産が疑われます。たとえ出血が少量であったとしても、自己判断をせずに必ず医師に相談するようにしてください。
破水
妊娠37週目以降の正産期に入っていたとしても、破水があった場合はすぐに病院に連絡するように指示されます。特に、妊娠36週目までに破水した場合は、切迫早産の危険が高い状態なのですぐに病院に連絡をして医師の指示を仰ぐようにしてください。
尿漏れと破水の違い
尿は、尿道から排泄され、羊水は膣から流れるので、量が多い場合は出ている場所が違うので気づく人は多いでしょう。しかし、女性の場合は尿道と膣の位置が近いので、尿なのか破水なのかよくわからないというケースもあります。
尿の場合は、肛門のあたりに意識を集中して締めると自分の意思で止めることができますが、破水の場合は、自分の意思で止めることができません。尿なのか、破水なのか違いがわからないときは、自分の意思で止められるかどうか確認してみましょう。
切迫早産の主な3つの治療とは?
切迫早産の主な治療は以下の3つです。
2.子宮収縮抑制剤の使用(子宮収縮を抑えて出産に進行しないようにする)
3.膣洗浄や抗生剤、抗炎症剤の使用(炎症をおさえる)
安静
安静とはわかりやすくいうと、日常の生活行動を制限することです。
おなかの張りを抑えるために、できるだけ安静を保ちます。安静を指示されるときには、「出血がある」「おなかの張りや痛みがある」「妊娠高血圧症候群の兆候がある」といった症状があります。
自宅で安静
自宅で安静の指示がある場合は、安静にしているとおなかの張りや出血が収まる場合です。ですが、家での安静の指示の場合、どの程度動いてもいいのか悩んでしまう人も多いです。
同じ自宅での安静の指示であった場合でも、安静の度合いは人によって異なります。早産を防ぐ対策になるように、どんなことならOKなのか、何をやってはいけないのかなど、具体的なことを医師に事前に確認しておきましょう。
たとえば、「シャワーならいいが、入浴は避ける」「階段の登り、降りはしてはいけない」「基本的に寝て過ごさなければならない」「ソファーなどに座っていてもいい」などです。家庭の中で安静を保つ場合、家の中の構造や、家族構成などで、どんな動きをしているか、どんな動きが必要なのかは個人差があります。
早産を回避するために、これはやってもいいのか、何をやってはいけないのかといったところを細かい部分まで確認しておくと、安心して生活することができるでしょう。
入院による安静
入院による安静の指示があった場合は、病院で具体的な行動の制限についての説明があります。たとえば、「室内の移動ならOK」「トイレのみ移動OK」「ベッドの上から移動してはいけない」などです。
入院による安静は、人によってはかなりの行動制限をされることがあるため、出産までの期間が苦痛を感じてしまう妊婦さんは多いです。ですが、仮に早産になってしまう場合であっても、少しでも長くママのおなかのなかにいる期間を保つことが大切です。元気な赤ちゃんを産むために、病院の指示に従い、安静を保つようにしてください。
子宮収縮抑制剤の使用
出産時は、赤ちゃんを産むための子宮口を開くために陣痛が起こります。子宮の収縮を繰り返しながら、少しずつ子宮口が開いていき、子宮口が完全に開くと赤ちゃんは産道を通って産まれてくることができるのです。つまり、子宮の収縮は、子宮口が開いてしまうことを意味しているということです。
おなかの張りや子宮収縮がある場合、収縮を抑制して出産に進むことを防ぐために子宮収縮抑制剤を使用するということです。
子宮収縮抑制剤には、内服薬と点滴があります。必要に応じてどちらかを使うことになります。
膣洗浄や抗生剤・抗炎症剤の使用
「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」の説明のところで少しご紹介しましたが、膣から常在菌が入ることで子宮内が炎症を起こしてしまうことがあります。炎症を抑えることを目的として、膣洗浄や、抗生剤や抗炎症剤の投与といった治療を行います。
子宮頚管って何?子宮頚管が短くなると切迫早産になりやすいってどういうこと?
子宮頚管とは、子宮の下部にある子宮腔と膣をつないでいる部分のことをいいます。子宮頚管は、適度な長さがあります。妊娠中は、赤ちゃんが下に下がらないように固く閉じられていて、子宮の収縮を繰り返して出産時に、子宮頚管の部分が広がり、赤ちゃんがここを通って産まれてきます。
出典:weblio.jp
子宮頚管が短いってどういうこと?
子宮頚管の正常値は個人差がありますが、妊娠30週未満の場合は3.5cm~4cmくらいが正常値といわれています。
しかし、なんらかの理由で子宮頚管に子宮の圧がかかってしまうと、閉じていた子宮口が開いて赤ちゃんの位置が下がってしまうので、子宮頚管が短くなってしまいます。子宮頚管が短いというのは、子宮口が開いて赤ちゃんが産まれそうな状態になってしまっているということです。
妊娠24週未満の妊婦さんの場合、子宮頚管の長さが3.0cm以下になると切迫早産のリスクが高めるため、安静の処置を取ることがあります。子宮頚管の長さが、2.5cm以下になってしまうと入院による安静が必要だといわれています。
子宮頚管が短いといわれるということは、赤ちゃんが下がって産まれそうになってしまっていることを意味しています。そのため、赤ちゃんがこれ以上下がってこないように子宮の収縮を抑制したり、安静を保ったりする必要があるということなんですね。
切迫早産にならないための予防方法はある?
切迫早産を予防するために大切なことは、切迫早産の兆候をできるだけ早く発見し、必要な治療を行うことです。そのために大切なのが「妊婦健診」です。かかりつけの健診をきちんと受けて、医師の指導があった場合は指示に従うようにしましょう。
また、日頃から無理のない妊娠生活を心がけましょう。妊娠中は、バランスのよい食事や適度な運動を心がけることが大切ですが、切迫早産が疑われる場合、運動などを行う際には必ず医師の指示に従うようにしてください。
体調に変化があった場合は医師に伝えて指示を仰ぎましょう
いつもより、おなかの張りを強く感じる、茶褐色の少量の出血があったなど、普段とは違う兆候があった場合は必ず医師に伝えるようにしてください。体調の変化は妊婦さん本人でなければわからないことがあります。もちろん、病院で必要な検査や健診は行っていますが、気になることがあった場合はその都度確認すると、万が一の場合に早期発見につながります。
まとめ
切迫早産とは、正産期になる前に赤ちゃんが産まれそうになっている一歩手前の状態になっていることをいいます。ご紹介のように、早産は赤ちゃんが早く産まれてしまうほど、重篤な障害を残してしまう可能性が高まります。
そのため、切迫早産の状態になってしまった場合は、適切な処置を行い、安静を保ち、できるだけ赤ちゃんがお母さんのおなかのなかで成長できるような環境を作る必要があります。
切迫早産の危険を回避するためには、日頃からバランスのよい食事や無理のない妊娠生活を送り、必要な健診を受けることが大切です。
また、切迫早産の診断があった場合は、医師の指示に従い、早産にならないように注意するように心がけましょう。