出産費用は平均百万円。手当・控除など節約のための13の制度まとめ【2021年度版】
お腹に赤ちゃんを授かるのは嬉しいことですが、同時に気になる問題がお金のこと…。妊婦健診費・マタニティグッズ・ベビー用品・出産費用など、何かとお金がかかりますし、初めての妊娠の場合「どのくらいお金がかかるのか?」未知数でしょう。
そこで今回は、妊娠・出産・育児でかかるお金の事や、逆に、お金をもらえる13の公的制度について解説していきます。
もらえるお金は取りこぼしの無いようにしっかり貰って、妊娠・出産・育児でかかるお金を最大限減らしていきましょう。
平均100万円!?出産がらみでかかる費用はどのくらい?
まずは、妊娠・出産・育児でどのくらいのお金がかかるのか、把握しておきましょう。項目別にご紹介していきます。
妊婦健診費(自己負担分):平均5万円
産院にて妊娠が確定したら、出産まで定期的に妊婦健診を受ける必要があります。多くの自治体では妊婦健診14回分の「妊婦健診受診票」がもらえるという助成があります。助成金額は各自治体によって違いがあり、通う産院によって健診費も異なるので、助成で賄えなかった分を自己負担分として支払うことになります。
産院にも色々種類がありますが(参照:産院・産婦人科の選び方)、個人産院は検査項目が多かったりして健診費が高くなりがちです。
マタニティママ・産後ママ用品:5万円~
妊娠中はどんどんお腹が大きくなりますから、それに対応できるマタニティ下着・マタニティパジャマ・マタニティウェアなどが必要になってきます。他にも腹帯、妊婦用抱き枕、妊娠線対策グッズ、つわり対策グッズなども必要に応じて購入することになるでしょう。
また、産後であれば授乳服、授乳下着、母子手帳ケース、マザーズバッグ、骨盤ケアグッズ、産後ダイエット用品などなど。
これらの用品をどれだけ充実させるかは、それぞれのママさん次第ですが、最低でも5万円くらいはかかると考えて良さそうです。
ベビー用品・育児用品:10万円~
ベビー用品・育児用品は最初は何もなく、全部揃える必要があるために出費がかさむ項目です。
ベビー用肌着、ベビー服、オムツ、ミルク、哺乳瓶、おくるみ、爪切り、綿棒、おもちゃなどの他、ベビーカー、チャイルドシート、ベビーバス、ベビーベッド、抱っこひも、バウンサーなどの高額なものも揃える必要があります。
例えば、たまひよ赤ちゃんグッズ大賞1位の「フラディア ラクート」というチャイルドシートであれば、税込70,200円もします。
チャイルドシートなどは長期的に使用するため、高額で質の良いものを選ぶ人も多いようです。
この項目もママ用品と同様、各家庭によって大きく差がでる項目です。50万円以上お金をかける人もいれば、レンタルを活用して安く済ませる人もいます。ただ、何だかんだで最低でも合計10万円くらいの出費は覚悟した方が良さそうです。
産院での入院・分娩費:平均56万円(自己負担14万円)
入院・分娩費は産院や分娩方法などで大きく違いがあり、100万円以上の人もいれば30万円程度ですむ人もいます。入院・分娩費から出産育児一時金42万円を差し引いた金額が「自己負担分」として必要となります。
- 入院・分娩費の平均56万円
- 出産育児一時金42万円
- 自己負担額の平均14万円
という計算になります。
産院・産婦人科の選び方11のポイントで解説しましたが、最近は大部屋よりも個室を好む人が多いです。個室にした場合は「1日数千円~」の追加料金がかかるため、合計金額が42万円をオーバーするケースが多いようですね。
その他、食事などのサービスが充実している産院であったり、帝王切開などで別途手術代が発生した場合などは料金が高くなるでしょう。
他にも…
- 貧血、切迫早産など妊娠中のトラブルで発生する出費。
- 毎月のオムツ代、ミルク代。
- 出産祝いのお返し「内祝い」の出費。
- 夏と冬はドカッとUPする水道光熱費。
- 赤ちゃんの予防接種の費用(自己負担分)
- 里帰り出産の交通費や親へのお礼。
- 安産祈願、お宮参りなどの行事でかかる費用。
などの費用もかかりますし、最近は、ミルク作りにウォーターサーバーを使ったり、生協などの宅配サービスを使ったりなどの育児負担を軽減できるサービスが人気で、そういった費用もプラスで発生する人も多いでしょう。
参考記事↓
→ママの味方「食材・食事宅配サービス」の正しい選び方
→赤ちゃんに安全なウォーターサーバー選び6つの基準
以上のような出費を洗い出すと「妊娠・出産・育児でかかるお金のトータルは平均100万円前後」となるそうです。
妊娠・出産・育児の費用を大幅に節約できる13の制度まとめ
平均100万円と聞くと、もしかしたら「えーー!100万円もかかるの!?ショック…」と悲観的になる人もいるかもしれません。
でもご安心下さい。妊娠・出産・育児に関して金銭的な負担を減らすための制度が複数あって、自治体などからお金をもらう事ができるんです。13種類のお金の制度についてまとめました。
【1】妊婦健診費の助成金
妊婦健診でかかる費用は保険がききませんから、多くの自治体では費用の一部を負担してくれる制度があって、妊婦健診14回分ほどの受診票がもらえます。「差額(妊婦健診費-助成金)」を病院の窓口で支払う形になります。
助成金額は各自治体で違いがあり、例えば、大阪府の高槻市であれば、合計12万円の助成金となっています。(内訳→23,000円:1回、10,000円:2回、7,000円:11回(参照:www.city.takatsuki.osaka.jp))
同じ大阪府でも守口市であれば、合計91,000円の助成金となっています。(内訳→18,000円:1回、10,000円:3回、6,000円:10回(参照:www.city.moriguchi.osaka.jp))
このように同じ県内でも自治体によって、助成内容はまちまちなんです。
妊婦健診受診票はいつもらえるのか?というと、「妊娠確定後」に妊娠届出書を提出しに行った時です。大抵は、母子手帳をもらいに行くタイミングで渡してもらえます。(参照:母子手帳はいつどこでもらう?もらい方3ステップまとめ)
【2】出産育児一時金
出産関連でもらえるお金のメインがこの出産育児一時金です。健康保険に加入していれば入院・分娩費として基本42万円がもらえます。
産院の多くでは出産育児一時金の「直接支払制度」が採用されています。これは産院がママの代わりに、出産育児一時金を健康保険に申請してくれるというもの。
ママは退院時に差額(入院分娩費-42万円)を支払えばOKで、面倒な手続きをしなくてすむのでとても便利な制度でしょう。
※産院によっては直接支払制度に対応しておらず、ママ自身で申請しなくてはならない場合もあるので、産院にはしっかり確認しておくことをオススメします。
【3】高額療養費
高額療養費というのは、健康保険のきく治療をして1か月の自己負担限度額を超えた場合に、超過分をもらえるという仕組みです。基本的には妊娠・出産での医療費に健康保険は使えませんが、次のような大きなトラブルになった場合には適用されます。
【妊娠中】
つわり(重症妊娠悪阻)/切迫流産/流産/切迫早産/早産/子宮頸管無力症/妊娠高血圧症候群/前期破水/合併症/その他の疾患など
【出産・入院中】
陣痛促進薬の使用/死産/止血用の点滴/吸引分娩/子分娩/帝王切開分娩/無痛分娩の麻酔/新生児集中治療室の利用など
これらのトラブルによって医療費がかさみ、自己負担限度額を超えた場合には、高額療養費をもらえるのでしっかり申請しましょう。
※自己負担限度額は所得によって次の様に違いがあります↓
例えば、月収50万円、総医療費100万円、自己負担額30万円だった場合は「③区分ウ」に該当し、
80,100円+(総医療費1000,000-267,000円)×1%
=自己負担限度額87,430円
となり、30万円と87,430円の差額212,570円を受給できる事になります。高額療養費のおかげで、妊娠・出産で何かトラブルが発生しても安心でしょう。
【4】傷病手当金
これは「仕事をしている&勤務先の健康保険に加入している」ママさんに関係するもので、病気などで3日を超えて「無給」で休んだ場合に、4日目以降から支給されるお金です。
妊娠中は妊娠悪阻になってしまったり、切迫早産や切迫流産などのトラブルになってしまう事もあるでしょう。そんな時でも、この傷病手当金があれば安心!「日給×2/3×4日目以降の休んだ日数」の分のお金をもらうことが可能です。
例えば、日給9,000円、該当する日数10日だったとしたら、「9,000×2/3×10=60,000円」のお金を申請することができるんですね。申請先は勤務先の担当窓口か、各健康保険の窓口などです。
【5】医療費控除
医療費が1年間で10万円を超えた場合に、確定申告をすることで税金が戻ってくるというものです。重要なポイントは、ママ1人分だけではなく、家族全員分の医療費に適用されるということ。
ママであれば妊婦健診費、入院分娩費、通院の交通費、処方薬代、市販の薬代などはOKですし、虫歯や風邪で医者に行った時の診療代・薬代なども認められます。
妊娠や出産に関連した医療費、家族の医療費を含めれば、合計10万円以上になる可能性は高いので手続きするようにしましょう。いつどこで医療費を支払ったのか忘れないように、領収書はしっかりと保存しておきたいですね。
【6】所得税還付申告
妊娠や出産を機に、仕事を退職するママもいるでしょう。年度の途中で退職した場合、確定申告をすることで、払い過ぎた所得税を取り戻すことができます。
基本的に会社員などは、だいたいの年収を想定して、毎月のお給料から所得税が引かれています。そして年末調整をすることで、払い過ぎた分が戻ってきます。アルバイトでも年末調整ってありますから、年末調整の書類を書いた経験のある人も多いでしょう。
ただ、年度の途中で退職した場合には年末調整ができないので、ご自身で確定申告をして所得税を取り戻すのがこの手続きです。
【7】失業給付金&受給期間の延長
妊娠・出産を機に仕事を辞めたけど、「産後しばらくして落ち着いたら再就職しよう!」と考えているママもいるでしょう。そんなママに嬉しい仕組みが、失業給付金&受給期間の延長の仕組みです。
まず、失業給付金とは失業者に雇用保険から支払われるお金のことです。支給してもらう為の条件は「一定期間以上、雇用保険に加入していたこと」「積極的に再就職する意思があるけど、職業につくことができない“失業状態”にあること」が条件となります。
雇用保険の加入期間と、もらえる日数の関係は次のようになっています。
具体的にもらえる金額の計算方法は「基本手当日額×日数」で、基本手当日額は「日給×給付率(0.5~0.8)」です。
例えば、28歳で雇用保険に6年加入、日給10,000円、給付率0.6だった場合…
10,000円×0.6×120日=720,000円
という計算で合計72万円のお金が支給されることになります。
ただ、妊娠・出産にて退職する場合、2つ目の条件「積極的に再就職する意思があるけど、職業につくことができない“失業状態”にあること」をクリアする事ができません。
というのも失業給付金の受給期間は、原則として離職日翌日から1年間で、その期間にママが再就職するのは現実的でないからです。しかしご安心を!そんなママのために受給期間を最長4年以内まで延長できる特例措置があります。
つまり、「そろそろ育児が落ち着いてきたし、再就職しようかな」と思った頃に、失業給付金を受け取れるという事です。
ただ1つ注意点があります。受給期間の延長手続きは、申請期間が「退職の翌日から30日経過後の1か月間」と限定されていますので、この期間内にしっかりと手続きをしましょう。
【8】出産手当金
仕事をしており、産後も仕事を続けるママが対象となる制度。産休中は給料が出ないことがほとんどなため、健康保険からお金が支給されるというものです。勤務先の健康保険に加入していれば、正社員でなくとも、パート・契約社員でもお金をもらえます。(国民健康保険の人は対象外となります。)
※そもそも産休とは?
出産予定日前の6週間(産前休業)と、出産翌日から8週間(産後休業)を合わせた98日間休業できるという法律。産前休業は本人が請求すれば取得でき、産後休業は必須で8週間仕事をしてはいけません。ただ、産後6週間を過ぎ、本人が請求し、医師が認めた場合には働くことが可能です。
妊娠が発覚したら、勤務先に出産手当金の受給資格があるか確認しておくと良いでしょう。加入している健康保険によっては資格がない場合もあります。
産休前に勤務先で申請書をもらい、出産の際に産院に持参し、先生に必要事項を記入してもらいます。産休が明ける産後8週間(56日)経過後に、勤務先や各健康保険の担当窓口にて申請する流れとなります。もらえる金額は「日給の2/3×産休日数」ですので、家計の大きな助けとなるでしょう。
【9】育児休業給付金
育休(育児休業)の期間中は無給となるため、仕事を継続するママ・パパを対象に、経済的な支援をしてくれるという制度です。産後休業の翌日(産後57日目)から、赤ちゃんが1歳になるまでの期間、休業することができます。
もらえる金額は育休の最初の180日間は「月給×0.67×育休期間」、それ以降は「月給×0.5×育休期間」となっています。かなり長期間の間お金がもらえますから、働くママにとっては嬉しい制度でしょう。
ちなみに、保育園の空きがなくて入れない(待機児童状態)場合には1歳6ヶ月まで延長可能です。夫婦で育休を取りたい場合は「パパママ育休プラス」という制度が適用され、1歳2ヶ月まで期間が延長できます。
育児休業の申出期限は、法律で休業開始予定日の1か月前までと定めらてますので、休業開始日や終了日を明らかにして早めに会社に相談しましょう。復職後の労働条件について確認しておきたいですね。
産休や育休については、「あなたも取れる!産休&育休(厚生労働省)」も参考になるでしょう。
【10】児童扶養手当
離婚や未婚などシングル家庭を対象に支給される手当です。所得額によって支給額に幅があったり、所得制限などの条件もあります。これは各自治体によって違いがありますので、お住まいの市区町村のHPや窓口で確認してみましょう。
赤ちゃんが誕生したらできるだけ早く、お住まいの自治体の役所の担当窓口で手続きを行いましょう。支給月は4月・8月・12月の年3回で、4か月分ずつ振り込まれる形となっています。
ちなみにシングル家庭の場合、自治体によっては「医療費助成制度」「就労支援」「公的住宅への優先入居」など、いろいろなサポートをしているところもあるので、合わせて確認しておきたいところです。
【11】児童手当
赤ちゃんが生まれたらすぐに申請しておきたいのが児童手当です。基本的には、出生届を出す時に合わせて手続きするパターンが多いようです。
- 3歳未満:一律15,000円
- 3歳以上小学校修了未満:一律10,000円(第3子以降15,000円)
- 中学生:一律10,000円
という金額をもらう事ができます。ただ、所得額が多い場合には所得制限が設けられ、年齢にかかわらず一律5,000円となります。
もしかしたら「15,000円程度じゃ何もできない…」なんて思われる人もいるかもしれませんが、実は合計してみるととても大きな金額になります。
- 15,000円×36ヶ月=540,000円
- 10,000円×108ヶ月=1,080,000円
- 10,000円×36ヶ月=360,000円
- 合計金額:1,980,000円
子ども一人につき1,980,000円ものお金をもらえることになるんです。使わないで積み立てておけば、将来、専門学校や大学等の学費の足しにもなるでしょう。
もし児童手当を子供の将来のために貯蓄するつもりであれば、「学資保険」として利用することで「戻り率110%」のようにお得に貯蓄できてオススメです。
【12】乳幼児医療費助成
赤ちゃんの頃や幼児期は何かと病気にかかることが多いですが、その医療費を自治体が全額または一部助成してくるという制度です。金額や内容、期間などは自治体によっていろいろです。
この制度が適用されるのは「健康保険に子どもが加入していること」が条件ですので、出生届を出したら健康保険の加入手続きを行いましょう。子どもの健康保険証を受け取り後、役所にて助成の手続きをすれば、後日『乳幼児医療証』が届きます。
病院で診察を受ける際に、この乳幼児医療証を提示することで、その日の医療費が助成されるという形になっています。
自治体によっては出生届・健康保険・乳幼児医療証の手続きを一括で行い、後日、保険証と医療証を郵送してくれるところもあります。こういった自治体だと手間が省けて便利ですね。
【13】未熟児養育医療制度
赤ちゃんが未熟児で生まれた場合、しばらく入院して様子を見ることとなり「入院費がどのくらいかかるのだろう?」という点で不安に感じるかもしれませんが…
未熟児養育医療制度によって、養育の必要がある赤ちゃんの入院・治療費は国が援助してくれるのでご安心下さい。「出生時の体重が2000グラム以下」など、対象となる条件に該当し、医師が入院する必要があると判断した場合に適用される制度です。
入院・治療費が公的負担となり、窓口での支払いが原則無料となります。
以上のように、妊娠・出産・育児に関して、経済的な負担減のための制度が13種類もあるんですね。
【まとめ】「もらえるお金>かかるお金」となるママも…
以上、妊娠・出産・育児で「最初どのくらいお金がかかるのか?」「経済的負担を減らせる13の公的制度」についてご紹介しました。
「かかるお金のトータルは平均100万円前後」となりますが、ここで紹介した制度を活用すれば、大幅に自己負担額を減らしていけることが分かるでしょう。
経済的負担を減らせる公的制度を簡単にまとめると…
- 【1】妊婦健診費の助成金
- 【2】出産育児一時金
- 【3】高額療養費
- 【4】傷病手当金
- 【5】医療費控除
- 【6】所得税還付申告
- 【7】失業給付金&受給期間の延長
- 【8】出産手当金
- 【9】育児休業給付金
- 【10】児童扶養手当
- 【11】児童手当
- 【12】乳幼児医療費助成
- 【13】未熟児養育医療制度
以上の13種類です。
見て分かるように、特に「働くママ」にとって嬉しい制度がたくさんあり、しかも大きな金額をもらえる事が分かります。こういった制度を最大限活用して、妊娠・出産・育児でかかるお金をなるべく減らしていきたいですね。
また、もらえるお金の番外版として「出産祝い」もあります。最近は少子化の影響もあって、両親が大きい金額を包んでくれる事も多いです(^^)
こうした「もらえるお金」を合算することで、「かかるお金」よりも「もらえるお金」の大きくなってしまうような人もいるでしょう。
以上、快適なマタニティライフ・育児ライフの為に、今回の記事がお役に立てれば幸いです。